2014年6月10日火曜日

「notwithstanding」「subject to」の使い方

「Adams ON CONTRACT DRAFTING」の2014年6月9日付の記事に、
「notwithstanding」の使い方について書かれていました。
http://www.adamsdrafting.com/a-notwithstanding-sideshow/

Adams氏が「直解主義者」(literalist)と批判する人からの質問として、
“Notwithstanding anything to the contrary herein,”よりも、
“Anything to the contrary herein notwithstanding,”が正しいのでは?
という質問を紹介していて、
それに対する Adams氏の回答は、
「そうかもしれないけれど、どちらでも同じ&どちらも使うべきではない」というものです。

まず、
「語学屋」として上の質問を考えると、
(私の自己意識は、未だに「法律屋」ではなく「語学屋」です)
この質問は、
「notwithstanding」は「前置詞」(preposition)なのか「後置詞」(postposition)なのか?
というものです。
そして「語学屋」としての回答は、
「どちらとしても使う」=「どちらも正しい」です。

次に、
「どちらも使うべきではない」というAdams氏の意見ですが、
では何を使うべきなのかというと、
「subject to」を使うべきだとAdams氏は言うのです。

これは、まったく合理的な意見で、
「A Manual of Style for Contract Drafting 第3版」でも、
315~316ページで説明されています。

「Notwithstanding~条,」(~条の規定にも関わらず・~条の規定に優先して)と書くと、
読み手は、その~条を読んでいる時には、
他にその内容を変更・制限する内容があることを知らないで読むことになり、
誤解を生じやすくなる、
少なくとも、
契約書を正確に理解する手間が増えることになります。

それに対して、
「Subject to~条,」(~条の規定に従って・~条の規定が優先するものとして)と書くと、
読み手は、即、その優先する内容を読むことができ、
誤解が生じにくくなる、
契約書を正確に理解する手間が省けることになります。

読みやすさなど、
ほとんど気にしないで英文契約書を起案している人が大半であるというのが、
これまで数多の英文契約書を読んできた私の感想ですが、
「法律屋」同士お互いの幸せのため、
さらには、
世の中をより幸せなものとするため、
できるだけ読みやすい英文契約書を起案することが、
「法律屋」には重要だと思うのです。

しかし、
ほとんどの会社、そして「法律屋」自身が、
読みやすさの向上に手間と時間(つまりは、お金)を掛けないために、
世界中の「法律屋」は日々、
お互いに読み辛い英文契約書を交換しては読むことに、
余分な手間と時間を費やしているわけです。
本当に、
人生の無駄遣いだと思います。

この状況を変えることに貢献することが、
「法律屋」としてのILTの目標の一つです。