2014年12月25日木曜日

「Action」と「Suit」

続けて『株式会社カイ・コーポレーション』のブログからですが、
量は少ないですが参考になる、
法務関連の用語集的エントリーがあります。
http://kaicorp.com/knowhow/69.html

その中に、
「Action」という単語の説明があります:
行為;措置;訴訟。 action には「訴訟」という意味があります。契約書の中では、例えば「契約解除時に売手がとるべき措置」の「措置」という意味で action を使うこともあれば、「買手において契約違反があったときは売手は訴訟も含めてしかるべき手続を取ることができる」等、「訴訟」という意味で action を用いることもあります。従って、どちらの意味かよく見極める必要があります。 「訴訟」を意味する単語は他に lawsuit と suit があります。action はコモン・ロー上の訴訟、suit は衡平法(エクイティ)上の訴訟を本来意味し、 lawsuit は全てを含むとされています。ただ、現在では action と suit は区別なく用いられています。契約書ではよく action, suit と並記されます。上記のような事情もあり、私はまとめて「訴訟」とすることにしています。

この中では、
「action はコモン・ロー上の訴訟、suit は衡平法(エクイティ)上の訴訟を本来意味し、 lawsuit は全てを含むとされています。」
というのが肝で、
このような肝になる知識・情報を、
もっと簡単かつシステマチックに得られると非常に助かるのですが、
なかなかそうはいきません。

2014年12月24日水曜日

期限の利益の喪失

マレーシア法弁護士に、
「期限の利益の喪失」について質問したところ、
「そのような規定はない」との回答でした。

これはおそらく、
「the benefit of time」という表現が、
マレーシアおよび英国法において、
一般的ではないからだと思います。

例えば、
『株式会社カイ・コーポレーション』という翻訳会社のブログに、
以下の記述があります。
http://kaicorp.com/knowhow/31.html

『例文E:
 「借手は期限の利益を失うものとする。」
 相対翻訳: The Borrower shall lose the benefit of time.
絶対翻訳: All obligations of the Borrower shall be accelerated and become immediately due and payable.
「期限の利益を失う」というのは、決まった期限まで返済が猶予されていた債務を、直ちに返済しなければならないことです。
この日本語を自然に訳せば、 lose the benefit of time という文章ができてもおかしくありません。
法務省の「日本法令外国語訳データベースシステム」の辞書検索では forfeit the benefit of time という訳が当てられてます。
しかし、英文契約書ではこのような場合はほとんど accelerate や immediately become due and payable という表現が使われます。
米国企業や米国弁護士が作成した契約書で benefit of time を見たことは私は一度もありません。』

『米国企業や米国弁護士が作成した契約書で benefit of time を見たことは私は一度もありません。』ということですので、
マレーシア法弁護士がピンとこなくても無理はないです。

ちなみに、
この翻訳会社の代表である田口 亮さんは、
デューク大学のJD(3年間)を卒業しているという、
凄い人です。
http://kaicorp.com/profile#biography
事務所の画像を見ても、
本の量が半端ないですし、
余裕のあるデスクスペースで、
上手く行ってそうな会社(正確には翻訳者?)ですね。
http://kaicorp.com/profile#security

参考のため、
『日本法令外国語訳データベースシステム』に掲載されている、
民法137条の英訳です。
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/?re=01

Article 137 
The obligor may not assert the benefit of time if:
(i) the obligor has become subject to the ruling of the commencement of bankruptcy procedures;
(ii) the obligor has destroyed, damaged, or diminished the security; or
(iii) the obligor fails to provide security when it has the obligation to do so.
きっと、
「assert the benefit of time」なんて言っても、
通じないのだろうと思います。

2014年12月22日月曜日

経営法友会「英文契約書の頻出用語と読解のエッセンス」

昨日2014年12月18日、
初めて経営法友会の月例会に参加しました。

講師は、
三菱商事・法務部エネルギー事業チームリーダー(兼)金属チームリーダーの洞幸司さん。

開催趣旨は、
「英文契約に特有の頻出表現をセレクトし、それらが実際の契約書の中でどのように使用されているか、また、契約においてどのような意味を持つのか等につき、英文契約書を読む際に必要不可欠になる知識として、いくつかのフレーズを取り上げ解説します。また、紹介した用語が含まれた実際の契約書の意味をその場で考え、内容を紐解きながら、英文契約読解のエッセンスを解説します。」とのことで、
ごく入門的な内容で、
正直、今の私には不要な内容でした。

それでも、
参加者は広い会場に鮨詰めで、
本当に定員の300人位いそうでした。
英文契約書に関する、
根強い需要の大きさを実感しました。

広告・宣伝・価格設定など、
やり方次第では、
英文契約書に関するレクチャーでも、
十分に集客できると改めて思いました。

その際には、
①参加者にいかに自腹を切らせないか
②いかに自分の時間を犠牲にさせないか(=就業時間内に仕事として受講させられるか)
という2点が、
ポイントとなる気がしますが、
この2点はどちらも同じことで、
また、新規参入者には難しいポイントでもあります。

新規参入者には、
企業を個別訪問して小規模レクチャーをするというのが、
一番現実的だと思いますが、
その場合には「肩書き」がネックになってくる気がします。
せめて「米国法弁護士」くらいの「肩書き」がなければ難しいように思えます。
「某専門商社法務部員」+「各種英語資格」+「行政書士」の合わせ技では厳しいように思えます。

また、私としては、
普通に書籍に掲載されているような英文、
つまりは、
英語圏で普通に使われている英文には関心がなく、
(普通に書籍を読めば良いだけなので)
「それを英文契約書に書かなければならないのか」と、
頭を抱えてしまうような、
日本の典型的なビジネスパーソンが希望する条件を、
英語でどう表現するのかという部分を期待していたのですが、
当然ながら、
そんな期待は叶えられませんでした。

私が恥を忍んで、
自分でレクチャーするしかなさそうです。
こういう内容なら、
むしろきちんとした「肩書き」がない方が、
やりやすいような気がします。

いや、そういう意味では、
どんな内容のレクチャーでも、
やり方次第では上手くできるような気がします。

来年は、いろいろ試してみようと思います。
本当は、今年、いろいろ試してみるつもりだったのですが。。。

2014年12月17日水曜日

「warranty」と「condition」

私はこれまで、
基本的に米国法に基づいて英文契約書を扱ってきたため、
「warranty」と「condition」の区別を意識したことがなかったのですが、
現在、英国法の影響が強いマレーシアの案件を扱っていて、
この問題に直面しました。

マレーシアの「the Sale of Goods Act 1957」(以下、SOGA)の12条に、
「warranty」と「condition」の区別が規定されています。

 Condition and warranty
12. (1) A stipulation in a contract of sale with reference to goods which are the subject thereof may be a condition or warranty.
(2) A condition is a stipulation essential to the main purpose of the contract, the breach of which gives rise to a right to treat the contract as repudiated.
(3) A warranty is a stipulation collateral to the main purpose of the contract, the breach of which gives rise to a claim for damages but not to a right to reject the goods and treat the contract as repudiated.
(4) Whether a stipulation in a contract of sale is a condition or a warranty depends in each case on the construction of the contract. The stipulation may be a condition, though called a warranty in the contract.
2項によると、「契約の主目的に essential(本質的)な規定」が「condition」で、相手方がこの「condition」に違反した場合、相手方が契約の「履行を拒否した」(repudiate)として扱う権利が得られる、とのことです。
(しかし、法律英語らしい、主語・述語を明確に書かない文章ですね、、、)

3項によると、「契約の主目的にcollateral(二次的)な規定」が「warranty」で、相手方がこの「warranty」に違反した場合でも、商品を拒否したり、相手方が契約の「履行を拒否した」(repudiate)として扱う権利は得られず、損害賠償が得られるのみ、とのことです。

この区別は、
「英国法」(コモンロー)に伝統的な区別のようです。
http://www.mkikuchi-law.com/article/14566015.html

しかし、このウェブ記事↑、「下記condition, intermediate」と書きながら、
まったく下記されていないことは不満です。
無料記事なので、文句は言えないのですが。

「intermediate」は、
「BLACK'S LAW DICTIONARY 9TH」で調べても、
それらしい意味は出てきません。

ググってみると、
「innominate term」と同じように、
(おそらくは、同じ意味で)
「intermediate term」というように使用されるようです。

「innominate term」
http://www.businessdictionary.com/definition/innominate-term.html
「intermediate term」
http://www.businessdictionary.com/definition/intermediate-term.html

いずれも、
状況によっては「warranty」とも「condition」とも判断される規定のようです。

英文契約書を扱う以上は、
「米国法」に加えて「英国法」の知識も必要不可欠なのかもしれませんが、
非常に面倒ですね、、、

2014年12月9日火曜日

生徒全員にTOEFL 横浜、市立8高校で

日曜日に参加したTOEFL iBTのワークショップで、
前の席に座っていた2人が横浜市の高校の先生で、
その2人から、
「横浜市のすべての高校で、2年生全員がTOEFLを受験することになった」と聞き、
 驚きました。

早速調べてみたところ、
2014年2月17日付けの朝日新聞の記事を見付けました。

「横浜市教育委員会は新年度から、全日制の市立高校8校で2年生の生徒全員に米国の英語力試験TOEFL(トーフル)を受けさせる方針を決めた。受験料は全額公費で負担する。文部科学省は「英検と比べ問題が難しく、自治体単位での受験は聞いたことがない」としている。
 市教委によると、2年生約2100人を対象に、団体向けのペーパーテスト「TOEFL―ITP」を受験させる。新年度予算案に受験費用約650万円を計上した。目標点を設けるかは検討中だという。
 市教委高校教育課の高橋正彦課長は「客観的に英語力を把握し、授業のあり方を考える一つの指標になる。TOEFLは大学のクラス分けに使われる例もあり、海外大学への進学にもつながる」と話す。
 市教委は、市立中学全147校の3年生全員に英検を受験させることも検討する。新年度はまず30校で試験的に導入する。英語指導助手(AET)が常駐する中学校は、現在の100校から全校に広げる。また、小学校16校でも6年生に児童英検を受験させる。
 TOEFLを巡っては、自民党の教育再生実行本部が昨年、大学入試に義務づけることを安倍晋三首相に提言している。(岡田慶子)」

やはり団体向けのペーパーテスト「TOEFL―ITP」で、
TOEFL iBTではありませんでしたが、
今後、「TOEFL―ITP」も含めて、
TOEFLという試験全体の必要性が大きくなる可能性は高いと思います。
しかし、
市立中学全147校の3年生全員に英検を受験させる、
市立中学全147校に英語指導助手(AET)を常駐させる、
小学校16校でも6年生に児童英検を受験させる、
という横浜市は、
よっぽど金があるのだなと思います。

費用対効果は非常に疑問だと、私は思いますが。

2014年12月8日月曜日

Propell Workshop for the TOEFL iBT test

12月7日(日) 9:30~16:45、
CIEE(国際教育交換協議会)主催の、
教師向けにTOEFL iBT testを説明するワークショップに参加しました。
http://www.cieej.or.jp/event/seminar/TOEFLpropell.html

会場は、表参道にある「こどもの城」9F 906。
来年3月末には閉館するとのことなので、
ここの研修室を利用するのは最初で最後でしょう。

定員は30人で、おそらく満席でした。
中には、このワークショップに参加するためだけに、
わざわざ台湾から来ている男性もいました。
妻子が迎えに来なければ、
夕食でも一緒にしたかったところでしたが、
そうしていたら、
きっと私が直近4年は英語の授業をしていないことがばれて、
気まずくなっていたでしょう。

参加費は、税込3,000円で、
弁当&お茶2本込みという安さでしたが、
TOEFL iBT自体でいくらでも儲けられるので、
ワークショップは収支さえ合えば良いのでしょう。

講師は以下の2人。
宇佐美 修(栄光学園中学・高等学校)
横川 綾子(東京海洋大学)

宇佐美さんは、
ICU~Georgia Southwestern State University~The University of Tennesseeと、
一貫して英語畑を歩んできた人。
http://members.jcom.home.ne.jp/4068555301/resume.html

横川さんは、
上智大学で私の1年先輩で(法学部国際関係法学科)、
テンプル大学ジャパンキャンパス(教育学修士・英語教授法)の卒業生という以上の情報は得られませんでしたが、
どう聞いても若い頃に長年英語圏で暮らした経験のある英語を話す人でした。
http://www.kaiyodaiglobal.com/staff/

ワークショップは、
すべて英語ということもあり、
来ている教師たちは、
さすがに皆、英語が達者でした。
「英語教師は英語が話せない」というのは、
まったく当て嵌まらない人たちばかりで、
私も英語で話し続けて、
ワークショップ終了後は疲労困憊となりました。

私が最も知りたかったのは、
どうしたら日本に4人しかいないという、
「ETS公認 TOEFL iBT Propell Facilitator」になれるのか?
ということでしたが、
その4人の経歴を知り、
そのうち2人の英語を聞いて、
現時点の私には無理だと諦めました。

まずはTOEFL iBTで満点を取ることと、
個人授業でも良いのでTOEFL iBTを教える実績を積んでから、
(加えて、できれば本を出版してから)
ETSに直談判しようと思います。

しかしおそらくは、
TESOLで修士号を取っていないと無理でしょうね。

2014年12月1日月曜日

『初歩からきちんと英文契約書』(仲谷栄一郎・著)

http://www.amazon.co.jp/%E5%88%9D%E6%AD%A9%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%8D%E3%81%A1%E3%82%93%E3%81%A8%E8%8B%B1%E6%96%87%E5%A5%91%E7%B4%84%E6%9B%B8-%E4%BB%B2%E8%B0%B7%E6%A0%84%E4%B8%80%E9%83%8E/dp/4502122815/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1417132726&sr=8-1&keywords=%E5%88%9D%E6%AD%A9%E3%81%8B%E3%82%89%E8%8B%B1%E6%96%87%E5%A5%91%E7%B4%84%E6%9B%B8

『英文契約書の基礎知識』(1997年 The Japan Times社)に代わる、
英文契約書初学者が最初に読むべき本(として勧める)の候補として、
読んでみました。

『英文契約書の基礎知識』(1997年 The Japan Times社)は、
英語の例文&日本語の説明が古くて硬くて、
かなり不満があるのですが、
初学者が英文契約書の全体像を把握するためには、
現時点で市販されている書籍の中では、
今なお一番マシと思われます。

私がそうしたからという個人的な思い入れが、
判断に悪影響しているのかもしれませんが。

さて本書は、
月刊誌「ビジネス法務」の連載をまとめて大幅加筆したものとのことで、
3つの章から構成されています。

以下、感想です:

第1章「英文契約書にアプローチしよう」

英文解釈の説明に終始していて、
訳語(法律用語)の説明に乏しく、
本書の対象読者のニーズに合うのか疑問に感じます。

また、
編集の仕方も悪く、
とにかく通して読んでしまえれば問題はないのですが、
パッと見た感じ、通して読む気になりにくい書き方です。


第2章「英文契約書を読んでみよう~売買契約書~」

第2章は、なかなか面白いです。

しかし、
「例文はけっして模範例ではなく、説明のために多々の不備を盛り込んである」とのことで、
読み辛いです。

『初歩からきちんと英文契約書』というタイトルの本には、
英文契約書の初心者がなるべく多くの正しい英文に触れられるように、
「不備」は盛り込まないで、
なるべく多くの正しい英文を紹介した方が良いと思います。

また、
もともと月刊誌の連載記事だったこともあり、
英文解釈+用語説明と法務的判断とが入り混じっていて、
英文契約書(売買契約書)の全体像を把握しにくいように感じます。

月刊誌の連載時に、
一度に一つの条項を読むだけなら、
英文解釈+用語説明と法務的判断とが入り混じっていても、
特に読みにくいということはないのでしょうが、
一冊の本としてまとめて読もうとした場合には、
とても読みにくく感じます。


第3章「練習問題を解いてみよう」第1節「英文を解読しよう」

第1章と同じく、
英文解釈の説明に終始していて、
訳語(法律用語)の説明に乏しく、
読み辛い&果たして誰の役に立つのか疑問に感じます。

本節を読んだ初学者に聞いてみないと実際のところは分かりませんが、
英文解釈の説明そのものも、
初学者にはとても読み辛い&理解するのが難しいように思えます。

本節のように、
英文解釈の説明に徹するなら、
色分けや、より多くの図解がなければ、
読み進める&理解するのは難しいのではないでしょうか?

続く第2節「問題を見抜こう」は、
なかなか面白いのですが、
これも英文解釈と法務的判断が入り混じっていて、
中途半端な印象を受けます。

特に、
「まとめ」や「おわりに」等もなく、
本節で本書が終わるため、
唐突な印象を受けます。

また、
ところどころ英文が稚拙(場合によっては間違いと言って良い)です。
おそらく作者側(アンダーソン・毛利・友常)でも、
出版社側(中央経済社)でも、
ネイティブ・チェックを入れていないのでしょう。

< 結論>
あまり体系的ではないので、
タイトルから判断して購入するであろう英文契約書初学者にとっては、
効率的な本ではないように思います。

本当に残念ながら、
『英文契約書の基礎知識』(1997年 The Japan Times社)の代わりに、
英文契約書初学者が最初に読むべき本として勧めることはできません。