2015年2月24日火曜日

救済方法の制限(その1)

救済方法の制限条項についてです。

先日、海外営業担当者から見積書に、
「liquidated damage(予定損害金)については責任を負わない」という条件を記載したいので、
英語の文例を教えて欲しい、
という依頼を受けました。

当然、
「それでは、liquidated damage(予定損害金)以外にはどんな責任は負うつもりなのか?」という疑問が湧きましたので、
質問したところ、
「問題発生時に当社ができるのは良品との交換のみとなります」
との回答を受けました(苦笑)。

そもそも「liquidated damage」の概念を理解していないことについて、
仕方がないのかなと思う一方で、
海外営業担当者として、それくらいは理解しておいてもらいたいという気持ちもあります。

しかも、
この担当者は私の会社においてはエースと言える存在ですので、
彼が理解していないということは、
おそらく誰も理解していないだろうということは、
容易に推測されます。

これは社内研修や社内方針の問題だと思いますが、
他の中規模商社は、
この問題についてどう対応しているのか非常に気になります。

上司に話したところ、
「営業担当者に、見積書にそのような条件を記載しようという意識が出てきたことは素晴らしい」と、
glass-half-fullな反応をしたので、
自分のglass-half-emptyな反応を反省もしましたが、
同時に、
(おそらく)責任者として、
私には営業者の意識&知識を何とか向上させていく責任があるとも、
改めて思いました。

以下、
「問題発生時に当社ができるのは材料との取り換えのみとなります」
を実現するための、
見積書条件の考え方です。
少なくとも以下の3つの概念を使用する必要があるでしょう。
①製品保証の制限
②製品に問題があった場合の対応(=救済方法)の制限
③損害賠償の制限

ただし、
以上の3つの概念を使用しても、
「相手からの異なる条件提示を許さない」という、
もう1つ別の条件の記載をしておかないと、
相手がこちらが提示した条件を無視して異なる条件を提示してきた場合、
特別に対応する必要が出てきます。

このように突き詰めて考えて行くと、
結局、
「販売約款」「購入約款」が必要という結論になるわけです。

したがって、
私の次なる課題は、
このように突き詰めて考えていく風土を、
どのようにして営業部門に浸透させていくのか、
ということになります。

これは、
会社の風土自体が変わらなければ難しいことかもしれませんが、
まずは、私自身が、
突き詰めて考えていく習慣を身に着けたいと考えています。

以下、上記の見積書条件の参考英文です。

LIMITED WARRANTIES
SELLER SHALL ASSIGN THE MANUFACTURER’S WARRANTY FOR THE PRODUCTS TO BUYER TO THE EXTENT AUTHORIZED BY THE MANUFACTURER WITHOUT RECOURSE TO SELLER. THIS WARRANTY IS THE EXCLUSIVE WARRANTY AND IS PROVIDED INSTEAD OF ANY WARRANTY OF MERCHANTABILITY, FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE, OR ANY OTHER WARRANTY, EXPRESS OR IMPLIED.

LIMITATION OF REMEDIES
SELLER SHALL AT ITS ELECTION AND EXPENSE REPAIR OR REPLACE ANY PRODUCTS OR ANY PART THEREOF WHICH DO NOT COMPLY WITH THE FOREGOING LIMITED WARRANTIES, PROVIDED THAT SUCH PRODUCTS OR PART WAS USED IN A PROPER MANNER, UNDER NORMAL CONDITIONS AND IN ACCORDANCE WITH SUCH DIRECTIONS FOR USE AS MAY BE FURNISHED BY SELLER AND PROVIDED THAT ALTERATIONS OR REPAIRS UPON SUCH PRODUCTS OR PART BY ONE OTHER THAN SELLER SHALL HAVE BEEN PERFORMED, IN THE SOLE JUDGMENT OF SELLER, IN A PROPER MANNER AND SHALL NOT HAVE RESULTED IN A SUBSTANTIAL CHANGE THEREIN. THIS IS SELLER'S SOLE AND EXCLUSIVE LIABILITY AND BUYER'S SOLE AND EXCLUSIVE REMEDY FOR SELLER’S BREACH OF THE FOREGOING LIMITED WARRANTIES.

LIMITATION OF LIABILITY
IN NO EVENT SHALL SELLER BE LIABLE TO BUYER FOR ANY INDIRECT, INCIDENTAL, SPECIAL, PUNITIVE, DELAY, OR CONSEQUENTIAL DAMAGES, INCLUDING WITHOUT LIMITATION, LOSS OF DIRECT OR INDIRECT PROFITS, REVENUE, OR USE, WHETHER ARISING IN CONTRACT, TORT, OR OTHERWISE, EVEN IF BUYER OR ANY OTHER PARTY HAS BEEN ADVISED OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGES. IN NO EVENT SHALL SELLER’S AGGREGATE LIABILITY TO BUYER EXCEED ALL AMOUNTS ACTUALLY PAID BY BUYER TO SELLER.

上記の参考英文についての注意ですが、
「製品保証の制限」を、
「仕入先の製品保証の譲渡」と規定していますので、
保証内容を明記しておかないと、
保証内容が無効になる危険性がある場合には使えません。

また、
「救済方法の制限」についても、
製品保証の違反についての救済方法しか制限しておらず、
それ以外の契約違反=債務不履行についての救済方法は制限していないため、
それも制限する必要がある場合には使えません。

2015年2月19日木曜日

期限の利益の喪失(その2)

2014/12/24のエントリーに書きましたように、
マレーシア法弁護士に、
「期限の利益の喪失」について質問したところ、
「そのような規定はない」との回答を受けたので、
改めて、
「acceleration」と「occasions where one's debt or obligation immediately becomes due and payable」という表現を使って質問したところ、
やはり、
「そのような規定はない」との回答を受けた上に、
関連するかもしれない規定として、
「Time is of the essence to this contract」についての説明がありました。
(それは全く関連しないだろ、とツッコミたくなりましたが)

やはり2014/12/24のエントリーに書きましたように、
『株式会社カイ・コーポレーション』という翻訳会社のブログに、
以下の記述があります。
http://kaicorp.com/knowhow/31.html
『米国企業や米国弁護士が作成した契約書で benefit of time を見たことは私は一度もありません。』

マレーシアは「米国」でなく「英国」の影響が非常に強いので、
もしかすると、
『All obligations of the Borrower shall be accelerated and become immediately due and payable.』
というような「acceleration」条項は、
「米国」では一般的でも、
「英国」では一般的ではないのかもしれません。

マレーシア法弁護士によると、
「debt/payment dueのaccelerationを規定した条項を含む契約書は見たことがない」
ということですので。

もしかしたら、
日本国外では、より簡単に相殺が許されるので、
日本のように、わざわざ「acceleration」させて「相殺適状」にする必要性がない、
ということなのかもしれません。
実際、私も民法137条の規定は不適切だと思いますし。

または、
相殺したくなるような状況が発生したら、
とりあえず契約を終了させて処理することにして、
契約終了条項さえしっかりと規定しておけば良い、
ということなのかもしれません。

どちらかと言うと、
後者の方が正しい気がします。

2015年2月4日水曜日

JATLAW勉強会「Tools For Legal Translators」

先週の土曜日、
3か月振りに、
JATLAWのレクチャーに参加しました。
http://jat.org/events/show/tools_for_legal_translators_7_techniques_for_improving_accuracy_and_consist

講師は、
第9回「新橋・法務交流会」にも来てもらった、
Cathy Eberstさん。
JATLAWのレクチャーが翌日にあったために、
CathyさんはTAYL2&交流会に出席できなかったとのこと。

Cathyさんは、
何と私の「5倍」ものスピードで翻訳できるという、
超一流の法務専門翻訳者です。

この勉強会にはどうしても参加したくて、
妻が仕事であるにも関わらず、
娘を荒川区立保育園の一時保育に預けて、
参加しました。

勉強会の内容は、
-          OCR software and tools for creating a “cleaner” document
-          Translation memory software
-          Glossary creation
-          Macros and Word add-ins of specific use to legal translators
-          Tips for using the Standard Legal Terms Dictionary and Japanese Law Translation website
-          Tips for efficiently using resource materials
-          Translation check software
-          Bonus Tip: advice on how to synchronize Word keyboard shortcuts and macros on all your PCs
と、目白押しでした。

と言っておきながら、
実はいろいろな事情があり、
レクチャーには大幅に遅刻してしまいました(苦笑)

しかし、
レクチャー後の懇親会では、
MS Wordマクロの専門家&日本に数人しかいないというMS WordのMVPである、
新田順也さんと知り合うことができ、
懇親会中、ほぼ独占的に話ができました(笑)

その場で、
TAYL3での15分スピーカーを依頼して快諾を受けました。