2015年6月15日月曜日

「fault or negligence」

「故意・過失によらず」を英語でどう表現するかと考えると、
これがなかなか難しいのです。

「故意の過失」(intentional negligence, willful negligence)という表現などに遭遇すると、
非常に混乱してきます。

混乱するのは、
私がTorts(不法行為法)をよく理解していないことが原因だと思います。

とりあえず、
名詞であれば「fault or negligence」という表現を使っていますが、
(例えば「through the Seller's fault or negligence」など)
厳密に言うと、
「negligence」は「fault」の一形態(下位概念の一つ)のようですので、
簡潔に表現すれば、
「fault」一言で足りるのかもしれません。

副詞であれば、
そのまま「intentionally or negligently」が使い易いですが、
この表現は「breach」(侵害する)などの動詞を一緒に使わないと、
英語として成立しません。

そもそも、
Torts(不法行為法)で言う「過失責任主義」が、
英語で表現すると「fault principle」になるそうですので、
やはり「negligence」は「fault」の一形態のようです。

そう考えると、
菊地正登弁護士(日本&英国)の何も説明していないような表記が正しいのかもしれません。
http://www.mkikuchi-law.com/article/14673472.html

まったく、
勉強すべきことは山積みです。

2015年6月12日金曜日

BATIC(国際会計検定)

2015年度の業務目標設定の一つとして、
「英文会計」の能力向上を検討しています。

しかし、
現在の業務上、
信用調査会社からの調査レポートを読む以外に、
使う機会がないため、
客観的な基準を使用するのが都合が良いと考えました。

そこで、
東商のBATIC(国際会計検定)が第一候補に挙がってきます。

BATIC(国際会計検定)には、
subject 1とsubject 2という2つの形式があるのですが、
将来的にも経理の仕事をするつもりがない私に必要なのは、
全体の概略を理解できるようにするための「財務会計」と「管理会計」の知識であり、
そう考えると、
(簿記3級レベルの)BATIC subject 1で充分な気がします。
実際、
同僚も、簿記3級&BATIC subject 1で、
海外現地法人の決算書の確認等は事足りていると言っています。

BATIC(国際会計検定)の最大の難点は、
受験料が高いことで、
Subject1のみで 5,400円、Subject2のみで7,990円します。
(同時に受験すると10,150円)

第二の難点は、
試験日である日曜日が半日潰れることで、
(同時に受験すると1日潰れる)
毎週土日のどちらかにフットサルorバスケットボールをしたい私には辛いです。

7月受験が6/12(金)締切でしたので、
申し込み画面にデータを入力するところまでは行ったのですが、
どうしても「申し込み」ボタンを押すことができませんでした。

次回は12月13日(日)受験で(10月30日(金)締切)、
2015年度の業務目標を達成するためには、
絶対に受験する必要があります。

とりあえず、
subject 1のテキストをブックオフで買ってみましたので、
(ただし、古いテキストを200円+消費税で購入)
内容を確認することから始めようと思います。

せめて会社が受験料&テキスト代を負担してくれたらなと思いますが、
そうすると『逃げられない』というマイナス面も生じます。

(追記)
めでたく12月13日(日)受験でsubject 1に合格しました。

来年2016年度の目標設定のために一応、
subject 2のテキストもブックオフで買ってみましたが、
(やはり、古いテキストを200円+消費税で購入)
合格率を見るとsubject 1と比べてアホみたく難しく、
現時点ではコスパ的に受験は現実的でないと考えています。

(追記その2)
結局、subject 2合格を、
2016年度の業務目標とはしませんでしたが、
最新の公式テキストは購入しました。
(3,672円(税込)もしました)

とは言え、
本気で合格したければ、
公式問題集や予想問題集もこなす必要がありますし、
そうなると、
本代よりも時間&労力の方が問題となります。

現状では、ちょっと厳しいです。

2015年6月2日火曜日

Taniguchi v. Kan Pacific Saipan, LTD (10-1472)

今年の10月3日(土)に、
同志社大学のColin P.A.Jones 教授(ニューヨーク州・グアム準州弁護士)が、
JAT(日本翻訳者協会)のカンファランスでレクチャーする予定の判例です。
http://project.jat.org/kyoto/2015/program

控訴審までの経緯は↓こちら。
https://www.law.cornell.edu/supct/cert/10-1472

最高裁の判決を含む記事が↓こちら。
http://www.transenzjapan.com/blog/interpretation-translation/

日本語での記事が↓こちら。
http://realtime.wsj.com/japan/2012/05/23/%E5%85%83%E3%83%97%E3%83%AD%E9%87%8E%E7%90%83%E9%81%B8%E6%89%8B%E3%83%BB%E8%B0%B7%E5%8F%A3%E5%8A%9F%E4%B8%80%E6%B0%8F%E3%80%81%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AE%E8%A7%A3%E9%87%88%E3%82%81%E3%81%90%E3%82%8B/

結局、
連邦最高裁は、連邦控訴審を覆して、
「翻訳料金は(通訳料金と異なり)敗訴当事者が負担するinterpretation料金には該当しない」
と判決しました。
つまり、
interpretationとtranslationとを明確に区別したわけです。

ちょうど私が通訳・翻訳業界と絶縁している時期だったから気が付かなかったのでしょうが、
非常に面白い裁判ですし、
元巨人のドラフト1位(谷口功一投手)が関与している事件である上に、
そもそも日本人が米国の連邦最高裁で争うなんてことはほとんどないことなのに、
私が気が付くくらいに大きなニュースにならなかったのが不思議です。

さて、
連邦最高裁まで戦ったその翻訳料金ですが、
わずか「5,517.20 米ドル」だったそうです。

そのために弁護士費用その他の費用がどれだけ掛かったのか知りたいものです。

2015年6月1日月曜日

『Restitution: Civil Liability for Unjust Enrichment』(Ward Farnsworth著)

「過収金」の続きですが、
Restitution: Civil Liability for Unjust Enrichment』
というペーパーバックが到着しました。
http://www.amazon.co.jp/Restitution-Civil-Liability-Unjust-Enrichment/dp/022614416X/ref=tmm_pap_title_0?ie=UTF8&qid=1432880289&sr=1-1-catcorr

非常によくまとまっていて&内容も面白いです。
何よりも、
英文が非常に読み易いのが良いです。

これで、
日本語の本のように、
図解やまとめがされていれば最高なのですが、
それはILTが個人的にすべきことでしょう。


本書のような米国法の知識を、
体系的に身に着けることができるなら、
終了するには「4年」という長期が必要でも、
通信教育のロースクールを始めたいと思います。

もっとも、
とりあえず「1年」やってみて、
「Contracts」と「Torts」を体系的に身に着けることができれば、
少なくとも日本企業の「法務マン」としては十分という気もします。
1年目のもう一つのクラスが「Criminal Law」ではなく「Remedies」だったら、
ベターなのですが。

しかし、
私の妻は、
私が通信教育のロースクールを始めることに対して極めて否定的です。
理由は、
私が何事もすぐに飽きるからです(苦笑)。
たしかに、
私が継続できている習い事(とも言えませんが)は、
これまで英語だけですので、
私の妻が懐疑的になるのも無理はないです。

具体的にどのような成果を出せたら、
個人的に「成功」とみなせるのか、
基準と(妻への)プレゼン方法を、
予め決めておく必要がありそうです。


本の内容に戻りますと、
2章に紹介されている判例ですが、
http://www.leagle.com/decision/19971108946SW2d162_11087.xml/AMOCO%20PRODUCTION%20CO.%20v.%20SMITH
控訴審で、
出訴期限が一審の「2年」から「4年」に変更された理由は、
本件の「mistaken payments」が「an action for debt」に該当するとして、
かつ、
「2年」(書面によらないdebt)と「4年」(書面によるdebt)の区別が、
法改正で撤廃されたからとのことですが、
そもそも一審が出訴期限を「2年」と判断していた理由が分かりません。

別のウェブサイトを読むと、
http://www.bf-law.com/casenotes/116590323611.97.pdf
どうやら一審は、
法改正前の「不当利得」=「2年」という諸判例を、
「書面によらないdebtであるから」という理由を考慮しないで、
オートマチックに適用してしまっていたようです。

なるほどですが、
これは「テキサス州法」の判例であって、
それでは「カリフォルニア州法」ではどうなるのかと考えると、
まだ分かりません。

「テキサス州法」と同じ考え方を適用するなら、
「書面によらないdebt=quasi-contract」として「2年」となりそうですが(339条)、
「An action for relief on the ground of fraud or mistake」として「3年」も該当しそうです(338条(d)項)。
http://www.leginfo.ca.gov/cgi-bin/displaycode?section=ccp&group=00001-01000&file=335-349.4

「Gilbert Law Summaries: Remedies」によると、
「The appropriate remedy is a quasi-contract action at law.」(274ページ)とのことなので、
「2年」となりそうですが(339条)、
ずばり「mistake」が明記されている、
「An action for relief on the ground of fraud or mistake」が「特別法は一般法を破る」として、
「3年」となりそうです(338条(d)項)。

いずれにせよ、
 http://www.courts.ca.gov/9618.htm#Type_of_Problem_or_Case
は、分かりやすい表です。
この表に「restitution of unjust enrichment」も挙げられていれば、
一気に問題解決なのですが。


ちなみに、
「restitution」という法律用語が難しいのは、
①「a type of legal claim; a cause of action」という意味と、
②「a remedy for a contract claim, which is another cause of action」という意味の、
2つの意味があるからだそうです。
そして、
多くの場合は②の意味で理解されており、
①の意味での(「contract law」「tort law」と並ぶ)「restitution law」という意味では、
あまり理解されていないそうです。

本書のPrefaceには、
「The reader familiar with private law will recognize that restitution in the sense used here is in many ways symmetrical to the law of torts. Tort law governs liability for losses that one person inflicts on another. Restitution governs liability for gains that one person makes at another's expense. Tort and restitution law sometimes cover the same situations, with the choice between them just a matter of which amount is larger (and thus which the plaintiff prefers to recover): the plaintiff's losses or the defendant's gains. But restitution also offers a more powerful range of equitable remedies than are traditionally available at the end of a tort case, and it covers many situations that neither tort nor any other body of law does. Restitution thus is a major division of American private law, one that sits alongside the law of tort and contract and provides a practical and theoretical complement to them.」
とありますが、
なるほどその通り、
「contract law」と「tort law」を別の視点から理解するには、
「restitution law」を理解することが非常に役立ちます。

米国のロースクールでは、
「restitution law」は、
「Remedies」の授業で軽く触れられる程度のようですが、
「Restatement」に「Restatement of Contracts」「Restatement of Torts」と並んで「Restatement of Restitution and Unjust Enrichment」があるのに、
「Restatement of Remedies」がないわけですから、
本来は逆であるべきなのかもしれません。

いずれにせよ「contract law」と「tort law」を別の視点から見るという意味では、
(原告が被ったlossからではなく、被告が受けたgainから見る)
「Remedies」でも、その役割は果たしていると思います。