2015年3月27日金曜日

会社法&施行規則・改正の大会社・非公開会社への影響

直近の課題としては、
おそらく『内部統制システム構築・整備についての基本方針』の改訂だと思われますが、
今回の改正により、
一体何を新たにする必要があるのか、
以下にまとめてみました。

ベースは、dtkさんのブログ記事です。
http://dtk.doorblog.jp/archives/43175277.html

前提:
•東証一部上場の親会社の100%子会社。∴多重代表訴訟の可能性あり。
•規模としては大会社。
•株式の全部に譲渡制限がついている閉鎖会社:公開会社ではないので、社外取締役の事実上の義務化(327条の2)の議論も関係ない。
•監査役設置会社:監査役はいるが、監査役会はなく、社外監査役の義務化も無関係。

<対応が必要そうな項目>
•責任限定契約について、業務執行取締役等(2条15号イ)でない取締役及び監査役については、社外取締役または社外監査役でなくとも会社との間で責任限定契約を締結可能(427条1項)。

•会計監査人の選解任等に関する議案の内容は、監査役が決定する(344条1項)。監査役が2人以上ある場合には、監査役の過半数を持って決定する(344条2項):今までも監査役に提案権はあったが、特段の提案がない限りは、再任とみなされていた(338条2項)が、今後はそもそも議案を決定しないでよいのか(338条2項は今回の改正では変更はなかった)、個人的にはちょっと良くわからない。

業務の適正を確保するための体制の内容(内部統制システムの整備)に関する決定:
もともと取締役会決定を要する(348条3項4号、362条4項6号)ところで、もともと法律の要請通りに決議していた場合は、従前決定していた内容に加えて、改正後施行規則100条3項で次の事項については、追加的に決議が必要。
一 当該監査役設置会社の監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項
二 前号の使用人の当該監査役設置会社の取締役からの独立性に関する事項
三 当該監査役設置会社の監査役の第一号の使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項
四 次に掲げる体制その他の当該監査役設置会社の監査役への報告に関する体制
 イ 当該監査役設置会社の取締役及び会計参与並びに使用人が当該監査役設置会社の監査役に報告をするための体制
 ロ 当該監査役設置会社の子会社の取締役、会計参与、監査役、執行役、業務を執行する社員、法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者及び使用人又はこれらの者から報告を受けた者が当該監査役設置会社の監査役に報告をするための体制
五 前号の報告をした者が当該報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制
六 当該監査役設置会社の監査役の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に関する事項
七 その他当該監査役設置会社の監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備
(施行規則98条1項、100条1項、110条の4第2項、112条2項)
例示としては次のような内容が挙げられている。
当該株式会社の子会社の取締役等の職務の遂行に係る事項の当該株式会社への報告に関する事項(各項5号イ)
当該株式会社の子会社の損失の危険の管理に関する規定その他の体制(各項5号ロ)
当該株式会社の株式会社の子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制(各項5号ハ)
当該株式会社の子会社の取締役等・使用人の職務の執行が法令・定款に適合することを確保するための体制(各項5号ニ)
なお、上記については柱書に「当該株式会社における」とあり、親会社たる「当該株式会社」の体制整備を求めるもので、「当該株式会社」がその子会社等の内部に介入して体制を整えることを求めているものではないとのこと。

その他「事業報告」において、記載の追加変更が必要になると考えられる事項:
内部統制システムの運用状況の概要(施行規則118条2号)
親会社等との取引に関する事項(施行規則118条5号、128条3項)
後者の「施行規則118条5号」の条文を読んでも(引用条文まで読む気になれないので)よく理解できませんが、少し気になります。

2015年3月23日月曜日

『英文売買書式と取引実務』(伏見和史・著)

2006年12月発行の本で、
英文契約書関係の日本語の本としては、
『英文契約書の基礎知識』(The Japan Times)の次に、
私が読み込んでいる本です。

ただし、
読み込み具合と、内容の良し悪しとは、
それほど関連性はありません。

『英文契約書の基礎知識』は、
私が法務翻訳を開始した頃に購入した本だからです。
今読み返すと、
例文の質も、本の構成も、良くないのですが、
初学者が英文契約書を理解するための一冊目には、
良い本だと思います。

『英文売買書式と取引実務』は、
例文の質は良くないのですが、
(しかも、たまたま読んだ他人の「英文売買書式」についての解説という書き振りで、著者が自分が選んだ英文に対する責任を放棄しているようで印象が悪いです。)
本の構成は、
英文契約書関係の日本語の本としては珍しく、
売買契約書(正確には売買約款)に特化していて、
説明が詳しく、
体系的で読み易いです。

『英文契約書の基礎知識』や『初歩からきちんと英文契約書』(仲谷栄一郎)を始めとして、
ほとんどの英文契約書関係の日本語の本は、
英文契約書の全体像、英文契約書に特徴的な表現集、(売買、ライセンス、M&Aなど)各種の英文契約書の説明、
といったことを一冊に詰め込んでいて、
英文契約書の全体像を知るためには良いのですが、
それ以上の知識・技能を得るためには適していない場合が多いのです。

『国際売買契約~ウィーン売買条約に基づくドラフティング戦略』(LexisNexis)も、
売買契約書に特化している点は良いのですが、
残念ながら版型が中途半端に大きく、
(こんな中途半端な大きさにすることに誰が決めたのか疑問です)
持ち歩いて読み込む気になれません。
また、
サブタイトルから推測できるように、
ウィーン売買条約に関する説明に紙面を多く割かれていることも、
何度も読み込むには邪魔です。

近い将来、
私が個人的に満足できる=使い易い、
例文と構成にまとめた英文契約書についての本を、
出版できたら良いなと考えています。

私が満足できるレベルの例文が使用されている英文契約書関係の日本語の本が存在しない理由は、
本当の意味で『英語と法律の両方』を専門にする専門家が、
日本人にはいないからだろうと思います。

日本人の法務翻訳者のほとんどは、
それほど法律を勉強していないし、
日本人の海外法務担当者のほとんどは、
それほど英語を勉強していないように思えます。

が、その第一人者になれれば良いなと思いますが、
まずは、
目の前の実務に使える売買契約書類の例文集をまとめることから、
地道に始めます。

2015年3月10日火曜日

法務交渉の場数

所属部門の方針から、
私が他社との交渉に臨席する機会は、
これまで極めて稀でした。

しかし、
その数少ない機会の度に、
山ほど反省点が浮かび上がってきます。

その最大の原因は、
私の想像力の不足でしょう。

法務担当者として、
この想像力の不足は致命的とも言える弱点ですが、
その弱点を少しでも補うためには、
場数を踏むことが必要不可欠と考えています。

ちょうど、
4月から組織変更があり、
法務課の非管理職が私だけになるので、
なるべく多くの機会を見付けては、
積極的に他社との交渉に臨席したいと思います。

私の性質からして、
普段からそれほど重要でない法務交渉を積み重ねておかないと、
いざ重要な法務交渉が発生した時に、
上手く対応できないと思うからです。

2015年3月3日火曜日

「クレーム」の英訳

既に書いていることかもしれませんが、
備忘録として書きます。

一般的な意味での「クレーム」の英訳は、
「complaint」でしょう。

逆に「claim」の和訳は、
「請求」「主張」「債権」でしょう。

「クレーマー」の英訳は、
「complaining customer」でしょう。

逆に「claimer」という英語はそれほど一般的ではなく、
通常「claimant」を使います。

2015年3月2日月曜日

U.C.C. 2-312(3)「第三者の権利への非侵害の保証」

2-314(Implied Warranty: Merchantability; Usage of Trade)や、
2-315(Implied Warranty: Fitness for Particular Purpose)のように、
タイトルには書かれていませんが、
2-312(Warranty of Title and Against Infringement; Buyer's Obligation Against Infringement)も、
「黙示の保証」(Implied Warranty)の一類型です。

wikipediaの「Implied Warranty」
http://en.wikipedia.org/wiki/Implied_warranty

以下、U.C.C.の条文です。
http://www.law.cornell.edu/ucc/2/2-312
http://www.law.cornell.edu/ucc/2/2-314
http://www.law.cornell.edu/ucc/2/2-315

特に2-312(3)では、「第三者の権利の非侵害の保証」が「商人」にのみ規定されていて、
これが取引基本契約書においては問題になる場合も多いです。

(3) Unless otherwise agreed a seller who is a merchant regularly dealing in goods of the kind warrants that the goods shall be delivered free of the rightful claim of any third person by way of infringement or the like but a buyer who furnishes specifications to the seller must hold the seller harmless against any such claim which arises out of compliance with the specifications.

ロースクール生用のホーンブックの一つである『gilbert LAW SUMMARIES』の『Sale and Lease of Goods』によると、
"...the warranty of title under U.C.C. is breached only when someone makes a non-frivolous claim to superior title. The seller is not responsible for colorless claims of superior title. [U.C.C. 2-312, Official Comment 1; Jefferson v. Janes, 408 A.2d 1036 (Md. 1979)]"
とのことですが、
何が『non-frivolous claim』で、何が『colorless claim』なのか、その境界線は不明です。

また、
U.C.C.では、
その前身であるUniform Sales Actやコモンローの規則である、
『quiet possesion』に関するwarrantyを売主に課していないとのことです。
『quiet possesion』に関するwarrantyとは、
『一切の訴訟またはその恐れからの自由』(quiet possesion)を保証するものとのことです。
やはり、
何が『non-frivolous claim』で、何が『colorless claim』なのか、
その境界線に問題は戻ってきそうです。