2014年5月15日木曜日

「and」「or」の使い方

「Adams ON CONTRACT DRAFTING」の2014年5月14日付の記事に、
保証契約書の「and」の解釈が問題となっているケースが紹介されていました。
http://www.adamsdrafting.com/caesars-might-have-450-million-riding-on-an-and/

ケースは、
世界最大のカジノ運営会社であるCaesars Entertainmentが、
100%子会社の債務を保証する契約書上の文言についてですが、
親会社であるCaesars Entertainmentによる保証は、
以下の場合に終了すると規定しています。

①この子会社が、100%子会社でなくなった場合
②こ子会社が、100%子会社ではないその他の会社に全資産・資産の大半を移すか、合併した場合
「and」
③こ子会社が、「ディフィーザンス条項」(権利義務を無効とする条項)を援用した場合、または、保証契約が終了した場合

合理的に読めば、
①~③の「いずれか1つ」が満たされれば、
親会社の保証義務は終了することになり、
(その規定自体、どうかと思いますが)
実際、Caesars Entertainmentは、
保証義務を終了させるために持分の5%を売却しています。

しかし、
「and」で繋いでいるために、
英語の語法的には、
①~③「全て」が満たされなければ、
親会社の保証義務は終了しないと読めるのです。

この複数の項目を「and」で繋ぐか「or」で繋ぐかという問題は、
Adams氏が以前から繰り返し取り上げている問題で、
「A Manual of Style for Contract Drafting 第3版」(以下、MSCD)でも、
211~225ページで詳細に説明しています。
この部分は、
第11章「AMBIGUITY OF THE PART VERSUS THE WHOLE」(「部分」対「全体」についての両義性)に含まれていて、
特に論理学的な意味合いの濃い部分となっています。

私が曲がりなりにも英文契約書の仕事を続けていられるのは、
英語に対する興味と共に、
こういう論理学的な部分に対する興味があると思います。

その裏返しとして、
英語にも論理にも興味が薄い英文契約書の起案者&営業担当者に対して、
どのように対応するかというのが、
私の相変わらずの課題です。