2014年8月5日火曜日

conditional discretionの問題

「Adams ON CONTRACT DRAFTING」の2014年8月4日付で、
Acme shall not sell the Shares unless Widgetco consents.
という「条件付き禁止」(conditional prohibition) の文と、
Acme may sell the Shares only if Widgetco consents.
という「条件付き裁量」(conditional discretion) の文と、
どちらが望ましいかという記事が記載されています。
http://www.adamsdrafting.com/shall-not-unless-versus-may-only-if/

Adams氏の結論は、
Acme shall not destroy the Equipment unless Widgetco consents.
Acme may destroy the Equipment only if Widgetco consents.
では前者が望ましいというように、
表現される行為が望ましいか・望ましくないかで判断されるだろう、
というものでしたが、
(上記の文例では「機械を破棄しない」状態が望ましいと推測される)
読者コメント欄で活発な議論があり、
そちらの方が参考になりました。

コメントの一つに、
 "Crossing the border is discretionary only on weekends."
(= "One *may* cross the border only on weekends.")
という文例を挙げて、
「条件付き裁量」(conditional discretion) の文を使用すると、
その条件が満たされない場合は、
行為が「義務付けされる」(mandatory)のか「禁止される」(forbidden)のか、
曖昧になるため、
(上記の文例の場合、平日は国境を「渡らなければならない」(mandatory)のか、「渡ってはいけない」(forbidden)のか、曖昧)
「条件付き禁止」(conditional prohibition) の文を使用するのが望ましい、
とありました。

「条件付き禁止」(conditional prohibition) の文で、
上記の例文を書きなおした場合、
"One shall not cross the border on weekdays."
または、
"One shall cross the border on weekdays."
とするべき、
ということでしょう。

実際の契約書ではどうするべきか、
よく考える必要がありそうです。

2014年8月1日金曜日

「liquidated damages」 and/or 「actual damages」

「Adams ON CONTRACT DRAFTING」の2014年7月30日付の記事で、
「liquidated damages」(予定損害金)と「actual damages」(実際の損害賠償)とを、
選択できる規定が、
米国ヴァージニア州のCircuit Courtで「無効」とされたと記載しています。
http://www.adamsdrafting.com/making-liquidated-damages-optional/

米国ヴァージニア州のCircuit Courtが、
日本のどのレベルの裁判所に該当するのかは不明ですが、
「無効」とされた理由は2つあり、
1つは、
米国ヴァージニア州の最高裁判所の判例が、
「liquidated damages」(予定損害金)は、
“to avoid all future questions of damage”
という目的を果たさなければならない、
と言っていることです。
もう1つは、
「liquidated damages」(予定損害金)と「actual damages」(実際の損害賠償)との、
多い方を選択できるのは、
米国法で禁止されている「penalty」(罰金)に該当する、
とのことです。

この考え方は、極めて明確で理解しやすいのですが、
残念ながら、
私が扱う英文契約書では見かけたことがありません。

よく見かけるのは、
「liquidated damages」(予定損害金)に加えて、
「actual damages」(実際の損害賠償)も請求できる、
という規定です。

しかし、
「liquidated damages」(予定損害金)or「actual damages」(実際の損害賠償)
という規定が無効なら、
「liquidated damages」(予定損害金)and「actual damages」(実際の損害賠償)
という規定も当然無効となるというのが、
論理的な帰結だと思います。
(あくまでも米国(さらにはヴァージニア州)においては、ですが)

この考えが、
米国全体で通用するのか、
今後hornbookか判例データベースで確認しておく必要があります。