2017年5月10日水曜日

「(損害や費用を)被る・蒙る」

「(損害や費用を)被る・蒙る」を表現する動詞として、
英文契約書で圧倒的に最も多く見掛ける単語は、
「incur」です。

しかし、
この「incur」という動詞、
契約書以外の文章ではそれほど頻繁には見掛けないので、
厳密にはどういう意味なのか、
疑問に思いました。

まず、
いつものオンライン版『Oxford Living Dictionaries』で検索すると、
Become subject to (something unwelcome or unpleasant) as a result of one's own behaviour or actions.
とあり、
掲載されている例文からも、
自業自得的なニュアンスが読み取れます。

しかし、
iPad アプリ『BLACK'S LAW DICTIONARY 9TH』で検索すると、
To suffer or bring on oneself (a liability or expense)と、
特に自業自得的なニュアンスは読み取れません。

「suffer」を使えば良いだけかもしれませんが、
何となく契約書っぽくない感じがします。
もっとも、
この「契約書っぽさ」こそ避けるべきものであり、
もっと積極的に「suffer」を使うべきなのかもしれません。

しかし、
結局「incur」を選択してしまうあたりが、
私も保守的な法務担当者の1人なのでしょうね(苦笑)。

ちなみに、
「suffer」という動詞には、
目的語が続く「suffer~」と、
目的語が続かない(代わりに前置詞+前置詞の目的語が続く)「suffer from~」という、
2つの使い方がありますが、
何となく、
「suffer~」が~を直接的に、
「suffer from~」が~から間接的に、
ネガティブなものを被ると理解していたのですが、
今回改めて調べてみたところ、
オンライン版『Oxford Living Dictionaries』では、
「suffer~」がExperience or be subjected to (something bad or unpleasant)
「suffer from~」がBe affected by or subject to (an illness or ailment)
と、分かったような分からないような定義でした。

一つの違いは、
「suffer from~」に続くのがan illness or ailmentのようなニュアンスの内容であること、
もう一つの違いは、
私のこれまでの理解で合っているような気がします。

もう一つ、
英文契約書でよく見掛ける動詞に、
「sustain」がありますが、
この動詞は「~を支える」的な意味を強く感じるので、
私は、この文脈で使用することは避けています。

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