2017年11月15日水曜日

下請法に関する「受入検査」の運用

公取委のよる通達『下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準』(平成28年12月14日改正)に規定されていますが、
『返品』が認められるためには、
以下の条件を満たす必要があります。


「(前略)当該給付を受領後速やかに引き取らせる場合又は給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な下請取引の場合において当該給付受領後の当該給付に係る下請代金の最初の支払時までに引き取らせる場合に限られる。ただし,給付に係る検査をロット単位の抜取りの方法により行っている継続的な下請取引の場合において当該給付受領後の当該給付に係る下請代金の最初の支払時までに引き取らせる場合にあっては,あらかじめ,当該引取りの条件について合意がなされ,その内容が書面化され,かつ,当該書面と発注書面との関連付けがなされていなければならない。」




さらに、「製造委託,修理委託における違反行為事例」の一つとして、
「4-6 受入検査を文書で委任していない場合の返品
 親事業者は,受領した商品の検査を自社で行わず,かつ,下請事業者に対し,当該検査を文書で委任していない場合に,受領後に不良品であることを理由として,下請事業者に引き取らせた。」
と規定されています。






ここで、
(自ら受入検査をしない)商社にとっては、
下請事業者(=仕入先)に受入検査を委託するのと、
販売先に受入検査を委託するのと、
どちらがより望ましいのか?
という論点が浮上します。






下請事業者に受入検査を委託する場合のメリットは、
上記の『運用基準』に、
「給付に係る検査を下請事業者に文書により明確に委任している場合において当該検査に明らかな手落ちの認められる給付であっても,受領後6か月を経過した場合」
と規定されており、
「受領後6か月」は、受入検査で発見されるべき、いわゆる「明らかな瑕疵」を理由とした『返品』が認められることになります。




また、
いわゆる「隠れた瑕疵」を理由とした『返品』も、
受入検査を実施していなければ認められないはずですので、
これも認められることになります。






デメリットは、
下請業者から商社が納入を受領する場合はもちろんのこと、
たとえ下請業者から販売先へ直送の場合でも、
下請業者から当社への納入=受領時期と、
当社から販売先への納入and/or検収時期とのズレ、
つまりは、
(当社と販売先とで、瑕疵担保期間の起点が検収時と合意している場合)
瑕疵担保期間のズレが発生することですが、
これは、
販売先に受入検査を委託する場合も同じですので、
特にデメリットとは言えないでしょう。





ちなみに、
下請業者に対する各種対応の要請の起点となる『受領』ですが、
上記の『運用基準』には、
「ア 「給付の受領」とは,物品の製造又は修理委託においては,給付の内容について検査をするかどうかを問わず,親事業者が下請事業者の給付の目的物を受け取り,自己の占有下に置くことである。」
と定義されていますので、
下請業者に委託した受入検査が終了しても、
(そして、受入検査の合格時が所有権の移転時と契約していても)
当社の占有下に置かれなければ、
『受領』したことにはならないようです。




これに対して、
販売先に受入検査を委託する場合のメリットは、
販売先が受入検査をすることを要求している場合に、
その要求を満たせることくらいでしょうが、
これは、
受入検査を二重にやっても問題ないと思いますし、
下請業者に対する各種対応の要請の起点となる『受領』である以上、
瑕疵担保期間のズレが小さくなる訳でもありませんので、
特にメリットとは言えないでしょう。





デメリットは、
販売先が受入検査を実施してくれない場合、

または、
実施しても、3条書面に規定した検査期間内に実施してくれない場合、
下請業者に各種対応を要請できなくなることで、

これは極めて大きなデメリットだと考えられます。

上記をまとめると、
(自ら受入検査をしない)商社の場合、
下請事業者に受入検査を委託するのが、
より安全と考えられます。

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