2015年3月23日月曜日

『英文売買書式と取引実務』(伏見和史・著)

2006年12月発行の本で、
英文契約書関係の日本語の本としては、
『英文契約書の基礎知識』(The Japan Times)の次に、
私が読み込んでいる本です。

ただし、
読み込み具合と、内容の良し悪しとは、
それほど関連性はありません。

『英文契約書の基礎知識』は、
私が法務翻訳を開始した頃に購入した本だからです。
今読み返すと、
例文の質も、本の構成も、良くないのですが、
初学者が英文契約書を理解するための一冊目には、
良い本だと思います。

『英文売買書式と取引実務』は、
例文の質は良くないのですが、
(しかも、たまたま読んだ他人の「英文売買書式」についての解説という書き振りで、著者が自分が選んだ英文に対する責任を放棄しているようで印象が悪いです。)
本の構成は、
英文契約書関係の日本語の本としては珍しく、
売買契約書(正確には売買約款)に特化していて、
説明が詳しく、
体系的で読み易いです。

『英文契約書の基礎知識』や『初歩からきちんと英文契約書』(仲谷栄一郎)を始めとして、
ほとんどの英文契約書関係の日本語の本は、
英文契約書の全体像、英文契約書に特徴的な表現集、(売買、ライセンス、M&Aなど)各種の英文契約書の説明、
といったことを一冊に詰め込んでいて、
英文契約書の全体像を知るためには良いのですが、
それ以上の知識・技能を得るためには適していない場合が多いのです。

『国際売買契約~ウィーン売買条約に基づくドラフティング戦略』(LexisNexis)も、
売買契約書に特化している点は良いのですが、
残念ながら版型が中途半端に大きく、
(こんな中途半端な大きさにすることに誰が決めたのか疑問です)
持ち歩いて読み込む気になれません。
また、
サブタイトルから推測できるように、
ウィーン売買条約に関する説明に紙面を多く割かれていることも、
何度も読み込むには邪魔です。

近い将来、
私が個人的に満足できる=使い易い、
例文と構成にまとめた英文契約書についての本を、
出版できたら良いなと考えています。

私が満足できるレベルの例文が使用されている英文契約書関係の日本語の本が存在しない理由は、
本当の意味で『英語と法律の両方』を専門にする専門家が、
日本人にはいないからだろうと思います。

日本人の法務翻訳者のほとんどは、
それほど法律を勉強していないし、
日本人の海外法務担当者のほとんどは、
それほど英語を勉強していないように思えます。

が、その第一人者になれれば良いなと思いますが、
まずは、
目の前の実務に使える売買契約書類の例文集をまとめることから、
地道に始めます。

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