2017年2月12日日曜日

米入国禁止の大統領令、政権側の不服退ける 連邦控訴裁

朝日新聞の速報ですが、
米国時間2月9日、
連邦第9控訴裁(カリフォルニア州サンフランシスコ)が、
7カ国(イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン)の国民の入国を一時禁止した米大統領令について、
一時的な効力停止を維持する決定をしました。
http://digital.asahi.com/articles/ASK290HTXK28UHBI02Y.html?ref=flashmail

これは、
米国時間2月3日に出された、
ワシントン州西部地区による『暫定的差し止め命令』(temporary restraining order)を支持するものです。

この問題も、
オバマケアと同様に、
最終的には連邦最高裁に上げられることになると思います。

その場合のシナリオを、
『The Nine』『The Oath』の著者であるJeffrey Toobin氏が、
2月10日付の『The New Yorker』の記事にまとめています。
http://www.newyorker.com/news/daily-comment/the-vulnerabilities-in-the-ninth-circuits-executive-order-decision

この記事の中でToobin氏は、
連邦最高裁が米大統領令を支持する可能性のある論点として、
以下の4つのポイントを挙げています。

①憲法第3条に規定する、
当時者適格(standing)を満たさないのではないか?

今回のケースでは、
ワシントン州とミネソタ州が原告となっているわけですが、
その理由が、
「教授陣や学生たちへの影響により、州立大学の教育や研究が害される」
というものです。
教授陣や学生たち「自身」が提訴したのであれば、
何の問題もありませんが、
果たしてワシントン州やミネソタ州に当時者適格(standing)があるのかと。

②トランプ大統領は、
今回の大統領令を、
合衆国法典第8編第1182条(f)に基づいて出しているわけですが、
この制定法について、
連邦第9控訴裁は何の言及もしていないと。

③連邦第9控訴裁は、
今回の大統領令が基本的に「Due Process」違反であると判断しているわけですが、
その際に、主に「市民権」を持っている人たちに言及しているのですが、
今回の大統領令による影響を受ける人たちの大半は、
「市民権」を持っていない人たちであり、
そのような人たちの「Due Process」についての権利は遥かに弱いだろうと。

④原告側は、
今回の大統領令が「宗教による差別」であると主張しているわけですが、
この点についても、
入国の許可・不許可に関しては、
大統領に大きな裁量が与えられており、
原告側による「宗教による差別」であるとの主張が認められないかもしれない、
としています。

今回のケースが連邦最高裁に上げられることになれば、
おそらく、
いつものようにケネディ判事の判断次第になると思いますが、
移民や安全保障に関する大統領権限の根幹に係わってくるケースであり、
予断を許さない、
極めて興味深いケースになると思います。

(2月13日追記)
ちょうど1年前の「米国『テロリスト渡航防止法』施行開始」の記事へのアクセスが、
急に増えているので読み直してみたら、
その時=オバマ政権が指定した7カ国と同じですね。
http://shoshahomu.blogspot.jp/2016/02/blog-post_17.html

トランプ政権になって、
急に出てきた話というわけでもなさそうです。

(2月14日追記)
マイケル・フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)の辞任により、
トランプ政権は当面、
(バノン首席戦略官が主導したと言われる)今回のケースを、
連邦最高裁に上げることはなさそうですね。

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