2015年8月12日水曜日

倉庫業者の『善管注意義務』と『標準倉庫寄託約款』との関係

商法では593条で、
「商人カ其営業ノ範囲内ニ於テ寄託ヲ受ケタルトキハ報酬ヲ受ケサルトキト雖モ善良ナル管理者ノ注意ヲ為スコトヲ要ス」と、
倉庫業者に『善管注意義務』を課しており、
さらに617条で、
「倉庫営業者ハ自己又ハ其使用人カ受寄物ノ保管ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ其滅失又ハ毀損ニ付キ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス」と、
立証責任が倉庫業者側にあることが規定されています。
(注:倉庫業者の『善管注意義務違反』は債務不履行であり、債務不履行は債務不履行側が『義務違反』がなかったことを立証しなければならないので、617条がなくても同じ結論にはなります。)

しかし、
国交省のウェブサイトにも掲載されている『標準倉庫寄託約款』では、

(賠償事由及び挙証責任)
第38条寄託者又は証券所持人に対して当会社が賠償の責任を負う損害は、当会社又はその使用人の故意又は重大な過失によつて生じた場合に限る。
2 前項の場合に当会社に対して損害賠償を請求しようとする者は、その損害が当会社又はその使用人の故意又は重大な過失によつて生じたものであることを証明しなければならない。

として、
倉庫業者の責任を『故意又は重大な過失』に限定した上で、
寄託者が『受寄者の故意又は重大な過失を証明』する必要があると、
立証責任も転嫁しています。

当然、
『標準倉庫寄託約款』を使用しない倉庫業者など皆無でしょうから、
倉庫業者に対してよほど交渉力のある寄託者でない限り、
倉庫業者には商法593条&617条は適用されない、
ということになるのではないでしょうか?

実際、
ネットで検索すると、
商法593条&617条は任意規定のようですので、
上記の結論になりそうです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。