2016年3月11日金曜日

事後法・遡及処罰の禁止with中学生の自殺事件@広島県

2015年12月8日(火)に、
広島県府中町の町立府中緑ケ丘中の男子生徒が自殺した事件で、
事件に至るまでの学校による対応のあまりの杜撰さが大ニュースとなっていますが、
いろいろツッコミどころは満載の事件ですが、
法務的には、
「事後法・遡及処罰の禁止」に関わる点が、
一番気になりました。

「事後法・遡及処罰の禁止」は、
憲法第39条に規定されているわけですが、
そのコンセプトは、
必ずしも一般的に認識されているわけではないようです。

以下、同中学校による調査報告書の要旨ですが、
http://www.asahi.com/articles/ASJ3B5RS3J3BPITB00X.html
私が「事後法・遡及処罰の禁止」違反だと考える箇所は以下です。

「3年生を担当する教諭らで2015年5月ごろから協議し、これまでは3年生になってからの触法行為を対象にしていた推薦・専願基準を、今年度は「1・2年時も含めて3年間触法行為がないこと」と厳しい基準にする結論になった。」

「これまでは3年時の触法行為の確認ができればよかったため、3学年教員の記憶に頼っていた。1年時からの触法行為を含むことになったため、「記憶に頼ると間違いにつながる」と考えたD教諭が根拠となる資料を探そうと、11月12日、サーバー内の13、14年度の生徒指導推進委員会の会議資料を印刷。D教諭は委員会資料だから正確なはずと信じ、学年主任に渡した。

「1・2年時の触法行為を含めると決めた時点で、何を根拠資料にするか学校組織として検討すべきだったが、その意識はなかった。根拠資料の重大さを職員が認識していなかった。」

ここで『事後法・遡及処罰の禁止』違反となるのは、
「2015年5月ごろから協議し、、、厳しい基準にする結論になった。」のが、
具体的に2015年何月かは分かりませんが、
その2015年某月以降に発生した1・2年時の触法行為『のみ』を対象としなかったことです。

この事件に繋がる触法行為は、
自殺した生徒が中学1年時の2013年に発生しており、
その時点では「推薦・専願基準」の対象とはなっていなかったため、
記録&管理方法が杜撰で、
それが事件に繋がる間違いの原因になったと思います。

目的が異なると、
手続き(の正確性・厳格性)も異なってしまうという、
典型例ですが、
だからこそ、
『事後法・遡及処罰』は憲法でも禁止となっているわけです。
今回の事件は、憲法違反による事件とも言えます。

法務的には常識でも、
一般的には常識ではないということでしょうが、
一般的にも常識となるように、
機会をとらえて少しでも広めていきたいと思います。

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